細菌と人との関わりについて、引き続きより歯科的な話をしましょう
口内フローラはだいたい3歳ころ出来上がり、いったん出来上がるとあまりその構成を変えないのだという話を前回しました。
よく言う「体質」(口内炎ができやすいとか、虫歯になりやすいとか・・)の多くは、おそらくこの時期決定したフローラ内の菌の種類や活性度、数の比率が原因なのだろうと思われます。
なので、まずは最初に獲得するフローラをなるべく良質なものにする!ことが重要です。
しかし、3歳の子供は自分の口内フローラのことなんか考えちゃいないので、周囲の大人が考えてあげなければいけません。
まだまだ個々の細菌の役割には解明されていないことも多いのですが、虫歯菌や歯周病菌の悪性度の高いものを子供のフローラに定着させないようにするなら
まず
・甘いもの(ショ糖)を控える = 虫歯菌の活性を抑える
・正しい歯磨きを習慣づける = 菌の数を増やさない
この辺は以前から言われていて保護者の方にもだいぶ浸透してきているようです。
さらに、虫歯菌も歯周病菌も周囲の大人から子供に「移る」ので、口移しで子供に食べ物を与えたり、食器を共有したりしないことです。
そして、周囲の大人の方々は虫歯や歯周病があったら速やかに治療を受けるべきです。
治療を受けることで、菌の数を減らし、活性度を下げることができ、「イキのいい」菌を子供に移してしまうリスクを下げることができます。
もっと言えば、子供を作る前に両親とも虫歯、歯周病の治療を受けておくべきです。
特に女性が歯周病で妊娠した場合、早産のリスクが高くなるというデータもあります。重度の歯周病の場合、歯周病菌が血管内に入り全身を巡っている可能性があるので胎児へも悪影響を与えることが十分に考えられますので。
こうして、周囲の大人の努力で良質の口内フローラを獲得できればその子は「虫歯や歯周病になりにくい」幸せな人生を送ることができる、はずです
では、すでに口内フローラが完成してしまっている私達大人は、どんな菌活をすればよいでしょうか・・?
すでにできてしまった虫歯や歯周病を菌活で「治す」ことはできません。歯科医院で治療しましょう。
ただ、虫歯菌や歯周病菌の活動を抑制する効果がある、という画期的な乳酸菌「L8020菌」というのが発見されすでにマウスウォッシュやタブレット、ヨーグルトなどに商品化もされています。
こういう物を継続して使ったり摂取することで、虫歯や歯周病になりにくくなることは大いに期待できます。
継続しなければだめですし、油断して毎日の歯磨き、定期的な歯科医院でのチェックを怠らない!事が大事ですが・・
目には見えない「菌」。私達、歯科医師の仕事はいわばこれらの菌との戦いです。
今後、「菌」についての研究が進むと、歯科医療そのものも大きく変わる、かも知れません